ATRが測るもの
ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ、平均真の値幅)は、足1本がふだんどれだけ動くかを価格の単位で測った指標です。RSIを考案したワイルダーが紹介したもので、上がるか下がるかではなく、動きの大きさだけを見ます。ビットコイン日足のATRが2,000ドルなら、直近2週間あまりの1日の値幅が平均で2,000ドル前後だったという意味です。この値は、損切りをどれだけ離して置くか、同じリスクを取るには数量をいくつにするかを決めるときの基準としてよく使われます。
ATRは足1本がふだんどれだけ動くかを測った値です。計算方法と、損切り幅・数量への使い方を見ます。
ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ、平均真の値幅)は、足1本がふだんどれだけ動くかを価格の単位で測った指標です。RSIを考案したワイルダーが紹介したもので、上がるか下がるかではなく、動きの大きさだけを見ます。ビットコイン日足のATRが2,000ドルなら、直近2週間あまりの1日の値幅が平均で2,000ドル前後だったという意味です。この値は、損切りをどれだけ離して置くか、同じリスクを取るには数量をいくつにするかを決めるときの基準としてよく使われます。
ATRの材料は、足ごとに求める真の値幅(TR、トゥルー・レンジ)です。TRは下の3つの値のうち最も大きい値です。前の終値を入れるのは、ギャップ(窓)があるからです。前の足が100で引け、次の足が106で始まって105〜110の間を動いたなら、高値−安値は5にすぎませんが、価格は実際には100から110まで動いたのでTRは10です。24時間取引される暗号資産は、次の足がたいてい前の終値の近くで始まるため、TRが高値−安値と同じになる場合がほとんどです。
ATRはTRをワイルダー方式で平均した値で、TradingViewの初期設定は14本です。最初のATRは最初の14個のTRの単純平均で、その後は ATR =(直前のATR × 13 + 今回のTR)÷ 14 で更新していきます。新しいTRを1/14だけ反映する指数平均(RMA)なので、単純な14本平均のように古い値が一度に抜け落ちることはなく、少しずつ薄まっていきます。大きな足1本の影響が半分になるまでに9本あまりかかります。表計算ソフトでTRを単純平均すると、TradingViewの値と少し違って出るのはこのためです。
ATRは価格と同じ単位なので、銘柄どうしをそのまま比べることはできません。そこで ATR ÷ 終値 × 100、つまり価格に対する%に直して見ます。価格60,000ドルでATRが1,800ドルなら3%、価格0.5ドルでATRが0.03ドルなら6%で、数字は小さくても後者のほうが2倍大きく揺れていることになります。同じ銘柄でも価格が何倍にもなればATRもつられて大きくなるので、数年にわたる比較にも%が向いています。足の長さを変えるとATRも変わります。日足のATRは1時間足のATRより大きいものの、24倍にはなりません。1日の中の上げ下げが互いに打ち消し合うからです。
価格のボラティリティには、大きな動きのあとに大きな動きが、静かな局面のあとに静かな局面が続く傾向があります。ボラティリティ・クラスタリングと呼ばれる性質で、暗号資産だけでなく株式や為替でも広く観察されています。直近のATRが近い将来の揺れを見積もる物差しとして使われる根拠はここにあります。ただし図のように、ATRは急変が始まってから数本かけて大きくなり、価格が元の水準に戻ったあともしばらく高いまま残ります。平均なので常に遅れてついてくるもので、低いATRはこれまで静かだったという記録にすぎず、この先も静かだという意味ではありません。
ATRは損切りの位置を決めるときによく使われます。ふだんの揺れだけで損切りにかからないよう、エントリー価格からATRの何倍か離れた所に損切りを置く方法です。2倍や3倍がよく挙げられる例ですが決まった値ではなく、倍数が小さいとノイズに頻繁に引っかかり、大きいと1回に失う幅が大きくなります。損切り幅が決まれば、数量は 許容する損失 ÷ 損切り幅 で計算できます。ボラティリティが2倍になれば損切り幅も2倍、数量は半分になり、1回に失いうる金額は変わりません。詳しい計算は「損切り幅とポジションサイズの決め方」の記事で扱います。
ATRはほかの指標の材料としても使われます。スーパートレンドは(高値+安値)/2 からATRの何倍か(TradingViewの初期設定はATR 10本・3倍)離れた所に追跡線を引き、終値がその線を越えると方向が変わったとみなします。ケルトナーチャネルは指数移動平均の上下にATRの倍数だけ離した帯で、このサイトのボリンジャースクイーズ・スキャナーは、ボリンジャーバンドが EMA20 ± 1.5 × ATR(20) のケルトナーチャネルの内側に入るとスクイーズと判定します。先物の清算価格計算機は、ATR(14)の1.5・2・3倍離れた損切り価格と、その損切りが清算価格より先に届くかどうかを示します。どれも「ふだんの揺れの何倍か」という同じ考え方を使ったものです。
ATRは方向を教えてくれません。急落が続いても急騰が続いても同じように大きくなるので、ATRが大きくなったという事実だけでは、トレンドが始まったとも終わったとも判断できません。また14本の平均なので、清算が連鎖的に起きる瞬間のような極端な動きは平均に埋もれます。ATRの倍数で決めた損切りも過去の揺れを基準にしたものにすぎず、急変時には注文が損切り価格より不利な価格で約定することがあります。ATRはリスクの大きさを測る物差しであって、この先の動きを約束する値ではありません。
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